ラベル新聞 2018年7月23日号

凸版印刷機×フレキソ版で「和紙もクレープ紙も」

『フレキソ製版始めました』――。本紙7月1日号の広告が伝える通り、㈱フナミズ刃型製版(埼玉県朝霞市栄町、電話048・465・2140)はこのほど、シール印刷に向けたフレキソ版の提供を開始した。柔らかな版の特性を応用して、クレープ紙や和紙といった基材にもインキがかすれることなくカラー印刷が行えるという。亜鉛版、エコマグに次ぐ第三の柱が生まれたと自信をのぞかせる、木原一裕社長に話を聞いた。

――増設の経緯について

「エスコのCTPイメージャー『CDI Spark2530 InlineUV』を16年秋に導入しました。目的は主に2点で、一つは当社製版事業の受注量増加に伴う生産体制の強化です。CTPは『同2120』に次ぐ2台目ですが、1台でこなすのが厳しくなり、最大プレートサイズが635×762㍉と既設機よりも大きなイメージャーを迎え2台体制に。これまでは間に合わず翌日出荷になっていたところを当日発送が可能になるなど、生産性の向上を遂げました」

「また同機は、描画しながらUV露光を同時処理する『インラインUV』モデルです。従来、描画後に取り出して製版機で露光を行うところを描画と露光を一度に行うため、この点でも業務効率の改善に大きく寄与しています」

――2点目は

「当社は近年、フォーム印刷向けの製版も少しずつご依頼いただいていますが、シール印刷用に比べると1版がかなり大きく一度に焼けませんでした。こうした新分野への事業拡大もにらんで同機を選択しました」

――さて、新商材についてお伺いします

「特徴を一言で紹介するなら『クレープ紙や和紙など凹凸のある基材に対して、しっかり色が乗るフレキソ版』、というものです」

――開発の背景は

「この商材が生まれるまでにいくつかの〝偶然〟がありました。まず、当社が長くお取引させていただいている印刷会社からあるとき『フナミズさんで今後フレキソ版の出力をしてくれるなら製版機をタダであげる』と一言。オーバーホールが必要でしたが、引き取ってフレキソ製版業務を始めるべくいろいろ検証や実験を行っていました」

「そんな中、昨秋九州協組の技術研修会へ参加した際、版厚0・95㍉でシール印刷に使用できるという東洋紡製の最新のフレキソ版に出会いました。これを用いた印刷サンプルを見たところ、クレープ紙にもベタがきれいに印刷されており『こんなことができるのか』と驚き『ぜひうちでも取り組みたい』と決意。こうして、フレキソ版用製版機を偶然入手したところに、ちょうどシール印刷に使えるフレキソ版が登場した、という訳でした」

――ポイントは

「フレキソ版特有の柔らかさで凹凸面にも追従して、しっかり色が乗る点です。一昔前はクレープ紙や和紙には硬い版を用い強めの印圧で、といった手法が推奨されましたが、当社がご提供する新商材はこれら基材に加え、上質にもカスれなくカラー印刷が行えます」

「さらにほかの基材への適性を検証したところ、サテンに対する相性もかなり良好。このほか、インキが乗りにくくアイマークもかすれてしまう剥離紙へも、ベタがはっきり刷れます。ステッカーの裏に付す文字印刷用として、すでにお使いいただいています」

――できなかったことができるようになると

「当社では製版の受注をいただく際、何の基材へ印刷するかを必ず確認します。上質や和紙だと分かれば、カラー印刷は難しいですよとお伝えしますが、どうしてもという際には網の線数を調整するなどできる限りを試みます。皆さまもクライアントに『(和紙は)カスれますよ、きれいに擦れませんよ』などお答えしているのでは。シール印刷では期待に応えられないからとあらかじめ断ってしまったり、オフを推奨したりした経験があると思うのです」

「偶然も重なり、これまでの業界の常識を塗り変えるシール用フレキソ版のご提供が叶いました。亜鉛版、エコマグに次ぐフナミズ刃型製版の〝第三の柱〟になり得る存在と自負します。特別な機械も技術も不要、版を変えるだけでこれまでできなかった印刷ができる当社のフレキソ版で、新規獲得にどんどん挑んでいただければうれしいですね」