ラベル新聞 11月1日号

スポンジ「あなあき〜」でゼンマイ刃の曲がり抑制

クレームが起点、解決策「こっちが示す」

㈱フナミズ刃型製版(埼玉県朝霞市栄町、☎048・465・2140)が販売する副資材で、ゼンマイ刃に貼るスポンジに新製品が登場。等間隔に穴の開いた「あなあき~」(特許申請中)を発表した。
従来品へのクレームを起点に生まれた開発品について、木原一裕社長と考案者である製造部の諸井宗一郎氏に話を聞いた。

スポンジについて

木原 抜き加工用のスポンジは、素材の反発性を利用して刃の内側に抜き加工物が詰まるのを防ぐために使用します。
ゼンマイ刃の表面に粘着加工が施されたシート状のスポンジを貼りつけ、グッと1度押せば型の通りに刃がスポンジをカット。
こうすることで、どんな形状に対しても刃の内側に隙間なくスポンジを貼った形となります。

諸井 一方、隙間なく詰まったスポンジの反発力が原因で、刃を押し広げ曲がってしまう症状もみられます。
例えば幅10㍉の細長い長方形の刃型では、これが原因で10・5㍉に広がることも。
問い合わせに対して、圧力の加わったスポンジが刃を押し広げていると説き「刃型とスポンジの間に隙間を設けてください」と伝えてきました。
とはいえ、毎回一つ一つ少し小さく切って…といった運用は現実的ではありません。

開発の経緯は

諸井 当社はきちんと寸法通り納めているにも関わらず、この手のクレームは定期的に発生。
前述の注意喚起をするしか対処のしようがありませんでした。
6月にも同類のクレームがあり、悶々とする中〝こうすれば解決できないか〟と、スポンジに穴を開けて圧力を分散する構造を閃きました。
早速社長に相談し、社内で試作に着手。
刃型の中に貼って実際に抜いてみたら、まるでスポンジを貼っていないかのように大きな効果が見られました。

木原 これは特許を取るに値する開発だと感じられるほど、試作段階から穴の効果を実感しました。

構造の説明を

諸井 スポンジに穴を開けることによって、これまで抜き加工時に生じる逃げ場のなかった圧力を分散させている、というものです。

穴の加工法や、大きさや個数などはどのように

諸井 最初は自社で製造する円形のパイプ刃で「送り抜き」を施し、スポンジに穴を加工していました。

木原 初期はもう少し穴が大きい試作品も。
ただ穴が大き過ぎると穴と穴の間の〝加工していない部分〟も拡がります。
例えば冒頭の幅10㍉の細長い刃型にスポンジを使用した際、ちょうど未加工部分が型の内側に当たってしまえば結局圧で刃を曲げかねません。
ですから穴を大きくするのではなく、小さな穴を一定の密度で施し、未加工部分の面積を減らす方針に。。
穴の割合は面積比で40%とするのが、試作の末に見いだした最適解です。

〝そっちで工夫〟を解消 製品化まで相当順風満帆なようですね

諸井 6月のクレームで客先から帰路につく中構想が生まれて、7月には試作第一号ができていました。
アイデアが降りてきて試作まですんなりいきましたが、量産の段階で躓きました。
実は現時点( 10月上旬取材)で最終的な量産体制が確定していないのですが、間もなく見通しはつく
算段です。

というのは

諸井 スポンジの加工会社に依頼すれば大丈夫だろうと安易に考えていましたが、加工が細かすぎるなどとどこも断られました。
社長が提案したパイプ刃と送り抜きによる加工にしても、スポンジはシート状で厚みもあり、ラベル印刷機での加工自体がそもそも困難。
生産品として大量に受けていただける先がありませんでした。
それでも何とか量産化のめどをつけ、ラベルフォーラムジャパンの当社ブースで実物を披露します。

製品名の由来は

木原 特許申請するに際して製品名が必要に。
大々的に売るのなら、覚えやすくキャッチーなものがいいなと考えました。
穴あきスポンジなので「アナーキー」か、でもカタカナ表記だと「anarchy」の和訳に映り意味が変わるので、最終的に「あなあき~」と命名しました。。
変に横文字にするよりも、名称自体でそれが何であるかを連想できるので気に入っています。

最後にこれをどう届けていきたいかとの総括を

諸井 これまでお客さまと接してきて、スポンジが刃に当たらないよう切ってくださいと説明するほかなかった。
〝そっちで工夫してどうにかしてください〟という応対はダサいというか、決してスマートな解決策ではありませんでした。
ですから、これからは「あなあき~を試してみてください」と、われわれの側から解決策をお示しできるのだと思うと、今からとても楽しみですね。

木原 当社の企業理念は「お客さまの仕事を楽に、楽しくし、仕事を楽しみ、人生を楽しむ」というもの。
あなあき~はお客さまの仕事を楽に、そして楽しくする存在だと感じています。
今回の事例では、企業理念に則した開発品を生み出すことができ、私自身も仕事が楽しいと実感しています。
何ともうれしく、そして幸せなことですね。