刃型での抜き加工を行っていると、刃持ちが悪くて何回も刃型を作り直さなければならない材料に直面することがあるかと思います。
今回は、そういったお悩みを解消できるかもしれない刃型のご紹介です。
DLCコーティング
DLCとはDiamond Like Carbon(ダイヤモンドライクカーボン)の略称で、ダイヤモンドと黒鉛(グラファイト)との中間に位置する材料のことです。
ダイヤモンドも黒鉛も同じく炭素(カーボン)のみで構成されている鉱物なのですが、構成している炭素原子の並び方が違います。
ダイヤモンドは、1つの原子に4つの原子が強力に結びついていて、これを「共有結合」と呼びます。対して黒鉛は炭素原子が平面上で結びつき、それが何層にも重なる形で形成されています。各層同士は「分子間力」という働きでなんとかくっついています。ちなみに鉛筆の芯の材料にもなる黒鉛。鉛筆で文字が書けるのは、鉛筆の芯と紙の摩擦で分子間力が切れることで黒鉛の層が剥がれ、紙にくっつくからなのです。
そして、これら二つの結合が複雑に交じり合っている構造を「アモルファス構造」とい、DLCはこれにあたります。ダイヤモンドのような高い硬度と黒鉛のような低摩擦性を 併せ持っているのがDLCコーティングの大きな特徴です。
当社のDLCコーティング
当社では、ゼンマイ刃とフレキシブルダイの両方でのDLCコーティング刃をご用意しております。
DLCコーティングゼンマイ刃は、刃先を鏡面加工し切れ味が増した「ミラー刃」へコーティングを施しています。
フレキシブルダイでは刃型を作製後にコーティングを施すので、当社で取扱いのある刃高・刃角であればどのような形状のものでも対応可能です。
コーティングの厚みは0.5μmと非常に薄いので、コーティングが刃の切れ味に影響することはありません。また、コーティング内にフッ素を含んでいるので刃への糊の付着を軽減してくれる効果も期待できます。
どんな時に使うと良いの?
白コートや白PETなど白色の色材が含まれる基材や、透明な基材に白色印刷されたものにその効果を発揮してくれます。
通常の刃材では10,000ショットももたず何度も刃替えをしていた仕事も、DLCコーティング刃を使用することで刃替せずに終えることが出来たという声や、ネーマー刃と比較して最大で9倍長く使えたという声を頂いたこともあります。
一回の仕事で3~4型と刃型を必要とする場合、刃型を取り換える度に機械を止めて、刃型の見当合せをして、ムラ取りをして・・・と時間と材料のロスがどうしても発生してしまいます。しかし、DLCコーティング刃を使用するとそれらの時間が無くなる、もしくは減らすことができるので作業の効率化を図ることも可能になるのです。
白色の色材には一般的に「酸化チタン」という物質が用いられています。酸化チタンは宝石や鉱物の硬さを計る際に使われる「モース硬度」で5.5~6程度と言われていて、これはナイフや釘と同等の硬度になります。特に白インキでの印刷時に白の濃度を強くすると、酸化チタンの含有量も多くなるので刃こぼれをさらに加速させてしまう恐れがあります。
価格と納期について
DLCコーティング刃の価格と納期は以下の通りです。
価格 | 納期 | |
---|---|---|
ゼンマイ刃 | ミラー刃価格+(総刃長×コーティング代) | 最短当日出荷 |
フレキシブルダイ | フレキシブルダイ価格+(刃型面積×コーティング代) | 2週間程度 |
【価格について】
詳細については是非お問合せ頂ければと思うのですが、計算方法としては上記の通りです。
ゼンマイ刃もフレキシブルダイも通常価格にコーティング代が加算される形で、定型かつ単面付の刃型だと通常のおよそ4~5倍の価格になります。しかし複雑な変型の刃型や多面付の刃型の場合、ベースとなる刃型代が定型の刃型よりも高くなり、コーティング代が加算されても通常の2倍程度で済む場合も有ります。
【ご納期について】
DLCコーティングゼンマイ刃はコーティング済の刃材を常備しているので、通常のゼンマイ刃と同じ納期にて作製が可能です。
一方でフレキシブルダイは刃型を作製した後にコーティングを外部に依頼する為、通常より大幅に時間を頂いてしまいます。ですので、フレキシブルダイの場合はリピートが頻繁にくる刃型の持ちが悪い仕事の際にご活用頂ければと思います。
リピート頻度が高いものに・・・
刃の耐久性が大幅に上がるDLCコーティング刃。大ロット時や何度もリピートが来るような案件の時にその効果を発揮してくれます。
刃型単体で見てしまうと価格面で躊躇してしまうかもしれませんが、一つの仕事・長いスパンでの刃型の購入頻度や刃型交換の手間や作業効率で見たときには、きっとお役に立てる製品ですので気になる方は是非お問合せ下さい。
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