シール・ラベル業界の発信基地として 原宿竹下通りでステッカー販売店展開
服飾雑貨などの企画・製造・販売を手かげる㈱リアルファクトリー(東京都品川区西五反田、☎03-5496-9005)は、原宿の竹下通りでステッカー販売店「MIJ FACTORY HARAJUKU」を4月にオープン。アーティストやクリエイターとコラボレーションして豊富なラインアップをそろえる。店舗のコンセプトを木原宏社長にインタビューした。 (大野)
−−「MIJ FACTORY HARAJUKU」オープンの経緯を教えてください
当社はアクセサリーや帽子、バッグ、革製品などの女性向け服飾材を扱っており、都内を中心に『REAL COLLECTION』『BRINDLE』『BLACK VENUS』といった店舗を展開しています。それがなぜ、分野の異なるステッカー販売店をオープンしたのか。きっかけは昨年の12月にさかのぼります。印刷関連の資機材を扱う私の兄、フナミズ刃型製版社長の木原一裕から『ステッカーの専門店に興味はないか』と相談を受けたのです」
「当初はステッカーの販売だけでは家賃や人件費などのコストを考えると、ビジネスとして成立しないのではと考えていました。しかし、市場を探ってみると、予想以上の需要量、客単価と店舗スペースなどから十分に成り立つのではと、年明けから準備を進め、4月29日に原宿の竹下通りにオリジナルステッカーを扱う『MIJ FACTORY HARAJUKU』をオープンしました」
−−服飾雑貨とステッカー、扱うものの違いは
「服飾雑貨は中国や韓国などの工場に、ある程度まとまったロットで頼まなければならず、不良品のロス分、為替の変動、在庫を保管する倉庫など多大なコストがかかります。さらに、激しい競争のなかブランディングしても、シーズン内に売り切らなければならなかったり、大手の動向に気を配ったりといった課題もあります」
「ところがステッカーは例え1000枚の在庫を抱えても場所をとらずに保管できますし、デザイナーの案をそのままオンデマンド印刷で形にして小回りのきく展開ができます。寡占化が進んでいるアパレル業界より、オリジナル商品で勝負しやすいのではと感じています」
−−なぜ原宿の竹下通りを選んだのでしょうか
「人の流れが多く、また、コラボレーションできるアーティストも豊富であるなど、日本で一番立地のいい場所だからです。竹下通りには国内外から多くの人が訪れ、観光客の割合も高い。つまり、毎日同じ人ではなく、初めて店舗を訪れる人が多く、それだけわれわれのステッカーをPRできる機会が増えるという効果があります。面白いものや変わった取り組みはブログやSNSで広まりやすい環境が整っていますし、口コミなどによる爆発的なヒットが期待できます」
「原宿を拠点に活動しているアーティスト・クリエイターとコラボレーションしたステッカーもラインアップし、これらをPRするのにこれほどいい立地はありません。彼らが生み出す優れたデザインの力を借りて、MIJが意味する〝Made In Japan〟の魅力的なコンテンツを国内外問わず、広めていきたいですね」
ラインアップ拡充多様なPR戦略
――ステッカーのラインアップは
「現在は1000種ほど。ネコがさまざまな衣装を着ているものや、サラリーマンのキャラクターシリーズなど、幅広いラインアップをそろえています。1種類につき20枚ほど刷って、どういったデザインが人気なのか探っているところです。ステッカーの製造元であるフナミズ刃型製版さんと協力して、1年以内には倍の2000種まで増やします」
「ラインアップのうち300種類はフナミズ刃型製版さんがデザインしたもので、デフォルメした昆虫に味のある詩を載せた『虫シリーズ』が代表作です。同社には、年明けの企画始動からオープンまで8000枚ほどステッカーを用意してもらいました。担当者の方は『BtoCの新しいビジネスは、仕事をする楽しみがある』と、積極的に協力してもらっています」
――店舗やステッカーのPRはどのように行っているのでしょうか
「当店でコラボレーションしているアーティスト・クリエイターのほか、アイドルを招いてイベントを開催することがあり、ファンの方から大きな反響を得ています。QRコードに動画を登録して、スマートフォンで閲覧できる友功社さん開発のアプリ『GiftMessenger』を採用したステッカーもあるのですが、こちらもアイドルの声をそのまま届けられるという点が好評です」
「また、ネット上の動画配信サイトでチャンネルを持っています。アニメチックアイドル桃知みなみさんが店内から生配信を行い、原宿名物の『ラジカセおばさん』こと、みるくさんなどにも出演してもらいPRを行っています。そのほか、今後、オンラインショップをオープンし全国的な販路拡大を視野に入れています」
コラボレーション続々一等地の発信基地として
――ステッカー販売店として、今後の方向性を聞かせてください
「まずは3年を一つの区切りと考えています。1年で商品ラインアップをそろえて、それから1、2年でブランドを確立し、MIJFACTORY H A R AJUKUの体制を整えていきたいです。当店はデザイナー・製造・小売り、それぞれを異なる企業・個人で分業していますので、連携を欠かさずそれぞれのノウハウを生かして規模を拡大していきます。また、展示会などを通じて、新たにコラボレーションできる相手を随時探しています」
「当店の役割は、デザイナーが描いたものをステッカーにして並べること。〝このデザインがいい〟と押し付けるのではなく、あくまでもお客さま自身に選んでもらうといったスタンスです。どのようなものがヒットするかは分かりませんが、作品の発表の場、ファンとの交流の場として活用してもらえれば。また、アーティストやアイドルのファンが来店すると話題にもなりやすい。当店に関わる人が増えれば増えるほど、大きな波となって訴求力も高まります」
――ステッカーの可能性を広める取り組みに期待しています。最後に、展望を教えてください
「法人個人問わず、さまざまな人を巻き込んで展開していきたいです。竹下通りという情報発信にベストな立地を生かして、コラボレーションの輪を広げていきます。当店がステッカーのブランドとして確立すれば、そこでヒットしたデザインを缶バッジやスマホケース、オリジナルキャラクターのライセンスなどにも発展させられます」
「シール・ラベル業界に対しても、自社商品を試す場として店舗の売り場を提供したいと思っています。『新商品を開発しても披露する場がない』『展示会だけではなく実店舗で消費者の生の声を拾いたい』といった方々に向けて、BtoCの新たなビジネスを促進する、業界の発信基地にしていきたいです」