企業が事業を継続していく上で進化していくことは、とても重要なことです。今回ご紹介する企業は、地道な努力を続け、事業の幅を広げ、着実に成長しています。「生き残りの極意」とは、業界を見渡す広い視野をもって、たゆまぬ努力を続けること、社長の人柄が企業の成長に繋がると感じました。
ラベル・シールの製作をサポート
株式会社フナミズ刃型製版は、ラベルやシールを印刷する版や型を製作する会社です。現社長である木原一裕さんのお義父さんが事業を始めました。創業時のフナミズ刃型は、専らシールの裁断用抜き型である刃型を製作する会社でしたが、刃型の製作だけでなくシールの製版にも事業を拡大し、版下・版・刃型のすべてを受注できる会社として現在に至っています。
一口にラベル・シールと言っても様々なジャンルがあり、例えば、スーパーで売られている食品の表示ラベルやバーコード、また、写真やイラストによる商品のイメージを示すものなど多岐に渡ります。木原さんはフナミズ刃型に入社する前、コンピュータ関連の仕事をしていました。刃型や製版の知識や技術があったわけではありません。刃型については仕事現場で学び、製版やそのデータ作成については、それこそイチから勉強を始め、身に付けました。刃型の製作・納品の仕事を行いながら、製版の勉強をした木原さんは、深夜まで会社に残ることもありました。ただ、前職のコンピュータ・システムの仕事では、納期直前に徹夜が続くことも珍しくはなく、深夜まで会社に残ることはたいして苦にはならなかったと当時を振り返ります。それよりも、パズルみたいにフィルムを重ね合わせていく製版の仕事にのめり込んだことのほうが、鮮明に記憶として残っているそうです。
信用を糧に成長を続ける
木原さんが、製版の仕事もこなせるようになり、フナミズ刃型は刃型の製作だけでなく、製版の仕事も受けることができるようになります。ラベル・シール業界は、製版を行う会社は製版だけを、刃型の会社は刃型だけをと、専門分野に特化する会社が多く、ワン・ストップで製版と刃型を頼むことができるフナミズ刃型は、取引先から喜ばれ、受注を伸ばします。木原さんは、刃型製作で培ったそれまでの会社の信用が、製版という新しい仕事に繋がっただけと、謙虚に話してくれましたが、けっしてそれだけではなかったでしょう。こうしてフナミズ刃型は製版の仕事も順調に増え、今まで以上に人手が必要になります。ただ、その当時は売り手市場で、有限会社であったフナミズ刃型には、求人広告を出してもなかなか人が集まらなかったそうです。そこで株式会社化し、「株式会社フナミズ刃型製版」として社員を迎えることにしたのです。入社した社員は、木原さんが指導して、戦力に育てました。いまフナミズ刃型製版の社員の平均年齢は、34歳。この業界では珍しい若い社員が中心の職場だそうです。
好奇心と探求心で業界をリード〜特許も取得
木原さんは、「面白そうな話に、首を突っ込みたくなる性分」だそうです。現在、フナミズ刃型製版では、「フレキシブルダイ」というゼンマイ刃とは違うタイプの刃型が、ゼンマイ刃と一緒に活躍しています。この「フレキシブルダイ」は、木原さんが「drupa(ドルッパ)」という、世界最大規模の国際印刷・メディア産業展に視察に行った際、ドイツで調査したものです。また、研究熱心な木原さんは、従来は両面テープで固定していたゼンマイ刃を磁石で固定する新たな技術の開発に成功、「エコマグ」と名付けた
この技術で特許を取得します。ゼンマイ刃は、通常、機械への取り付けに両面テープを用いますが、刃型交換に時間が掛かるのと両面テープによるムラが問題とされています。その点、木原さんが開発した「エコマグ」ならば、刃型の交換が簡単で、ゼンマイ刃の使い勝手をより良くする画期的な技術として、注目されています。
目指すはラベル・シール業界の駆け込み寺
現在、フナミズ刃型製版は、ラベルやシールのデザインにも力を入れています。スーパーのように多くの商品が陳列される棚で、商品を目立たせるためには、斬新かつポップなデザインが求められますし、注意喚起を促す警告用のシールは、人目を引くことが重要になります。場面や用途に応じて、様々なデザインが要求されるラベルやシールですが、その製作においては高い技術を持ちながらも、デザインを不得手としている会社は少なくないそうです。木原さんは、そのような会社をデザイン面からもバックアップしたいと考えているのです。ラベル・シール業界の駆け込み寺として、業界から支持されるフナミズ刃型製版、益々の飛躍が期待されます。