アナログとデジタル そしてFMスクリーン
前回(本誌No.13秋季号)、CTP版とFMスクリーンの優れた特徴を紹介したが、今回はそれを活かすための注意点と樹脂版比較テストの結果を参考に紹介したいと思う。
今まで「CTP版は」と一括りで特徴を述べてきたが、実は同じブラックレイヤータイプのCTP版でも版材メーカーや種類によって印刷結果に差がでる。
その違いを検証する為に同じデータから、それぞれの樹脂版で製版し実際に印刷テストをしてみた。(図①)
樹脂版比較テストについて
このテストを行ったのは2年ほど前、現在使用しているCTP用樹脂版の種類も出そろい、当社でもFMスクリーンを使い始めていた頃である。当初使っていた版ではFMスクリーンでも比較的きれいに印刷され、AMに比べ多少、調整と注意が必要なくらいで特に難しいとは思っていなかった。
ところが、新たに使い始めた別の樹脂版でFMスクリーンを使ったところ、予想以上にアミが潰れうまく行かない事があった。樹脂版の種類によって多少仕上がりに差があるとは思っていたが、その想像をはるかに超えるものだった。
そこで、実際にどの位の違いがあるのか、シールのデザインや印刷条件によってどの版材が適しているのかを知るためにテストを行なった。
*注意:今回の製版データはごく平均的な樹脂凸版のドットゲインを想定してトーンカーブを調整したもので、そのまま製版した場合とはアミ濃度が異なるが、今回の検証には問題ないと思う。
●AMスクリーン
まず、AM175線の濃度を比較してみよう。色の濃さを比較する場合、通常は濃度計を使って数値で確認するが、今回は目視でもわかりやすいように画像を切り貼りして並べ直した。(図②)
中間濃度50%付近で見ると、Cが他に比べ濃くなっていることがわかる。100%部分(ベタ)を比べてみると、逆にCが他よりも薄くなっているのがわかる。テストの趣旨としては、ベタの濃度を同じにして印刷するべきだが、オペレーターが全体の濃度をみてインキを調整したためと思われる。
これは、今までのシール印刷でも良くある現象で、写真やイラストがデザインされているカラーのシールの場合、その画像全体(実は中間濃度部分)が色見本等と比べ濃くなってしまう。そのため、オペレーターは色見本に近づけようとインキの量を絞っていく。その結果、全体的に濃淡のない眠い画像に仕上がってしまう。BはA、Cに比べ、中間濃度付近のドットゲインが大きい版と言える。
ハイライト1%部分はどうだろう。(図③参照)
Aに比べB,Cが少し濃く見える。特にBの縁が濃くなっているのが判る。前々回(本誌No.12夏期号)の“凸版印刷とドットゲインについて”でも述べた『アミ版の場合、アミが密集している中心部よりも、端の方がより印圧の影響を受けやすく、ドットが潰れて濃くなる。』という現象がおこっている。自然に消えて行くグラデーションを表現する場合は、Aの版が向いていると言うことになる。
●FMスクリーン
つぎに、FM25μの濃度を見てみよう。(図④)
FMスクリーンの場合、樹脂版の違いによる濃度差が明らかに大きいのがわかる。またAMスクリーンに比べ、シャドー部分のドットゲインがかなり大きい。
Cの版の場合、70%~90%が100%より濃くなってしまっている。
アミの高濃度部分はベタの中に小さな白抜きの点(小さな穴)があるのと同じ状態で、本来であればその穴の部分は紙(印刷基材)には触れないので、印刷されてもその部分は白く抜け、ベタよりは薄く見える。が、しかし、その穴が小さすぎたり、浅かったりすると、その穴にもインキが入りただのベタ部分よりも多くのインキが版に転移し、版から紙に転移するので結果的にただのベタ部分よりも濃くなってしまう。
ハイライト部分(1%、3%)は、どの版もAMスクリーンよりも薄く印刷できている。これは、樹脂凸版で写真等の入ったコントラストの高いカラー印刷を自然に表現する上ではかなりの武器になると思う。
樹脂版比較テストのまとめ
Aの版材は全体的にドットゲインが少なく、FMも安定して出ている。耐刷性では他の版材よりも劣ると言う報告もあるが、適正な印圧で印刷すればそんなに悪くもない。
Bの版材の場合、AMは割ときれいに出ているのだが、FMはなぜかムラになってしまい、うまくいかなかった。またFMの1%はドットの潰れが大きく、ちょっとざらついた感じになった。
Cの版材は全体的にドットゲインが多めで、特にFMはちょっと多すぎる。今回のテストでは、同じデータでも樹脂版によって印刷結果が違う事や、同じ樹脂版でもスクリーニングによってドットゲインが大きく違う事がわかった。
以上の事から、樹脂版やスクリーニング等、それぞれの特性を理解した上で製版する事が良い印刷をするためのポイントである。