ラベル新聞 2015年4月15日号

亜鉛版提供拡大へ

㈱フナミズ刃型製版(埼玉県朝霞市栄町、木原一裕社長、☎048・465・2140)は現在、自社で独自加工を施した印刷用亜鉛版の供給に注力している。亜鉛版はメーカーが2012年末で生産販売を完全終了しており、市場に流通する在庫分がなくなった後は、海外製の輸入かマグネシウム版への切り替えの選択が迫っていた。今後、希望する全国の製版会社に対して加工のノウハウを共有していく方針だという。

印刷用亜鉛板の製造元だった三井住友金属鉱山伸銅㈱は2011年6月、感光液の製造に必要な樹脂の調達が困難となったのを理由に事業終了を発表。代替樹脂の調査や新たな感光液の開発を試みるも、持続的な生産が困難と判断した。

12年12月に完全終了した後、製版会社は在庫分を使用して供給。生産中止を見越して大量に発注した各社の亜鉛版も、1年半を経過したころから全国的に底をつき▽海外製を輸入▽マグネシウム版への切り替え▽提供終了、といった選択を迫られた。海外製は仕様の違いから旧製品と同様に使用できず、またマグネシウム版も関東をはじめ東日本ではなじみが薄く代替品には至らなかった。

フナミズ刃型製版は当初、海外製を輸入して供給を試みたが、文字の太りが顕著で断念した。顧客の亜鉛版要求の声は依然根強く、輸入品をベースに従来品の仕様に近づけるための研究に着手。数カ月にわたる検証とデータ収集の結果、同社独自の加工を施したオリジナル亜鉛版の開発に成功した。すでに正規品として流通しており、生産体制が安定したため今回、正式に亜鉛版の提供を広く発表する運びとなった。

同社の亜鉛版は米国製がベース。旧製品に比べてレジストが厚く、従来の腐食工程を経ると文字が太り網点もベタに仕上がるため、自社内で一度剥がして新たに最適なレジストを再貼付。さらに版材裏面のバックコートも製版後にすべて剥がして出荷している。

亜鉛版終売の影響で廃業した製版会社もあり、フナミズ刃型製版は現在、亜鉛版の受注が増加中。今後は全国の製版会社とアライアンスを組み、同社の加工技術を開示していく意向を明らかにした。木原一裕社長との一問一答は次の通り。

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――メーカーの供給が終了し「終わる技術」だった

「いくら生産終了したとは言え、仕様の異なる海外品や使い慣れないマグネシウム版を『今後はこれが基準だから』と押しつけるようなまねはできない。ただ、今まで国内で購入できたものを輸入してきて、さらに剥がして新たに貼って…となれば当然コストは数倍に。しかし〝高価な亜鉛版〟では使ってもらえない」

「それでも困っているお客さまを助けるのが当社の使命。自助努力でどうにかできないか・先達が長年培った亜鉛版の技術をここで絶やす訳にはいかない、という思い一つだった。正直採算は度外視だった」

――一番難しかったのは

「厚いレジスト以外にも感光剤の成分や粘度も旧製品とまるで違う。当社では旧製品の在庫がある段階から、すでに自社亜鉛版仕様のものも無償でお付けして、二つ納品して試していただいてきた。感想をフィードバックし完成に生かした」

――今後については

「今回、従来の倍サイズを誇るエッチングマシンを増設した。それでも1社で供給するには限界があり、九州や北海道、東北へ東京から出荷していては納期を要する。顧客の困りごとを助けたい、というわれわれと同じ志を持つ製版会社には、当社のノウハウを喜んで提供する用意がある」